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第1部 三章【護りのミサト!】その4 第六話 ひとときの休息

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-11-28 18:30:00

65.

第六話 ひとときの休息

 南3局からはミサトの構えが違っていた。

 あのような素晴らしいプレーを見せられたらヌルい麻雀は打てない。ただでさえ堅い守備をさらに固めて逆転は実質不可能にする。それがミサトの戦い方だ。

(守って守って守り切る! それが私の持ち味だ)

 そして終局――

「ノーテン」

 結局、ミサトには微差トップのまま逃げ切られて中野は逆転出来ないまま終わった。

「く~~~! 固いなー井川プロ。甘い牌1枚も出ないまま終局まで続くか普通? さすがは『護りのミサト』と言われるだけはある。完敗だよ」

「いや、正直ツイてただけです。実際今の局は終局時に安全牌を完全に使い切ってしまったし。途中のツモ牌が安全じゃなかったら最後の最後で放銃の可能性もあったんです。紙一重ですよ」

「こっちも勝ちましたよ、ミサト」

 B卓ではゴールデンコンビが圧勝していた。新宿最強と言われる2人が素人に負けるわけはないのである。

 トキオはリーチ合戦で放銃したので危なかったが、ミカゲがそつなくアガリを重ねてくれたので終わってみれば躱し手ばかりだったはずのミカゲがトップ。トキオも二着を確保。結果――

 勝利チーム 女流プロチーム

 総合優勝 井川美沙都プロ(2連勝)

 ミサト率いる女流プロチームの完全勝利だ!

「総合優勝の賞品はこちらのお酒になります」

 それはかなり大きなビンだった。

「おお! 大きいなー。運ぶのも重いし、今みんなで飲んじゃいましょうか!」

「大賛成!!」

「ミサトさん、いいんですか? そこそこ高級ないいお酒ですよ?」

「いいのいいの。だからこそよ。それに、お酒はみんなで飲みたい派だから」

 ミサトはいつも気前がいい。

 気が付けばジュリがみんなにグラスを渡してまわっていた。先読みのし過ぎである。これでミサトが「持って帰るから今は飲まない」と言っていたらどうするつもりだったのか。

「「カンパーイ!!」」

「あ、美味しいわねえ」

「33000円のお酒ですからね」

「けっこー高い! 買ったことない値段!」

「そりゃあ優勝賞品ですから、それくらいじゃないと」

「私、昔千葉県に住んでた事があって。その時にちょっとしたお祭りがあって、その中のイベントだったYES NOクイズで優勝した事があるんですよ。100人以上参加してたと思います。大きな公園でやったんですけど。優勝賞品は1000円分くらいの落花生でした」

「へえ、ミカゲは千葉にいたこともあったんだ。私も1年くらい千葉県に住んでたよ」

「てか、落花生って。千葉県っぽさ出してきたわね」

「実際に住んでた私の感想としては千葉県の印象は落花生より梨でしたけどね」

「あー、そーね。わかるわかる。てか落花生って埋まってるからどこに落花生畑があったのかさっぱりわかんないよね。それに比べて梨園はいたる所にあった」

「ねえ、そういえばさっきの二回戦の手が――」

「あれは1索が危なかったから――」

 ミサトたちと中野たちは酒を交わしながら感想戦などを楽しんだ。

────

──

「みなさん、そろそろ準備しないと花火大会が始まってしまいますよ」

「よーし、ヒック、じゃあみんなで花火を見に行っこー♪」

 ミサトたちは千鳥足で花火会場に向かう。すると丁度一発目が打ち上げられた瞬間だった。

 ひゅるるるるるる……どん! どどん!

「わあ、すごい真上!」

「きれいねー」

「みんなー、ビール買ってきたよー」

「みて、さっきの花火撮ったのこれ、③筒みたいじゃない?」

「本当だ、真ん中のだけ赤いし」

ガヤガヤ ガヤガヤ

「楽しいねえ、ミサト」

「そーね、ユキ。来て良かったねえ」

「うん!」

────

──

 一行は花火大会を楽しむと宿に戻って温泉に入り、ゆっくりと身体を休めた。

 戦士たちのほんのひとときだけの休息。

「ねえミサト。明日はどこに行くの」

「うん、明日はねえ、千葉行ってみよっか。ちょっとユキを連れて行きたいとこがあるの」

「千葉? わかった、楽しみにしてる」

「それじゃ、おやすみなさい」

「おやすみ、ミサト」

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